戦場から生まれた赤十字は博愛がテーマ

普段、私たちが目にする赤十字のマークは全国各地にある病院を通して一般的に知られているかもしれません。年末には助け合い運動の際の赤い羽根を思い起こす人も少なくないでしょう。その起源は、クリミア戦争の際に活躍したナイチンゲールの時代に遡ります。敵味方双方の兵士を同じように救護したということから、彼女の名と赤十字の精神が広く世界に広まりました。
イスラム圏では赤新月と呼ばれ、十字の代わりに三日月がシンボルとして使用されています。これはキリスト教のシンボルである十字の代わりに三日月が選ばれたからです。それでも、その精神は世界共通認識として今も各国の代表機関に受け継がれています。日本の場合、全国の病院と看護師養成機関が有名です。明治19年当時の救護看護婦養成のための博愛病院の設立に始まり、長い歴史が受け継がれています。現在は全国各地に看護専門学校と看護大学があり、毎年1350人もの看護師を養成しています。しかし、その活動範囲は医療機関と医療従事者の育成だけにとどまらず、幅広い国際人道活動に拡がっています。近年、世界各地で発生している紛争や大規模災害の現場では医療を始め多くの支援が求められます。世界的な赤十字のネットワークを活用した医療従事者の派遣、医療機器や医薬品の提供、さらには現地の人材育成にも携わり、救援を求める現地の人たちの大きな救いになっています。また平時から民間のボランティア組織などとも連携し、社会福祉の充実にも寄与しています。往時のナイチンゲールの精神が日本でここまで発展した姿は医療関係者にとっても大きな功績といえるでしょう。